▶ 藍の家 研究室の紹介
天然灰汁発酵建て藍染め染色研究と藍の材料であるタデ科の藍の材料栽培と染料(すくも)生産を研究テーマとし、地域社会との連携による藍の振興に取り組んでいる。
藍の家の全景、藍の瓶(200ℓ×4瓶、150ℓ×4たる)、実習室2室、展示室1室
藍の家の玄関
藍瓶(埋め込み式)、簡易藍瓶(たる)
大谷焼(2石瓶)、温度調節ができるようになっている
2階の展示室、作品や資料を展示している。
藍商人の商標看板と手板による品質見本
藍染めの資料展示
実習室、作品製作室
研究室書籍類、ゼミ室
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▶ 藍染めの方法
①布に模様をつける。
②布を水に浸け、まんべんなく浸透させる。手でよく絞り、水気を切る。
①藍染液に静かに浸け、よく布をさばいきムラ染めにならないように広げる 。
Step
1
Step
2
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➡
Step
3
①藍染め液が落ちないよう、よく絞り、手早く広げて空気酸化する。
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①好みの色になるまで浸染・空気酸化を繰り返す。
①水洗い、脱水、糸解きを行い、仕上げ洗いをして完成。
②乾燥、アイロンをかけて仕上げです。
①藍液に浸ける回数で紺色が濃くなっていきます。
Step
4
Step
5
Step
6
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➡
▶ 藍の生葉染め
生葉を取る
ミキサーに入れ水を入れる
取り出し金網でこす
生葉の汁に絹をつけ、しぼって空気に触れさせる
生葉染めの絹のハンカチ
① 藍を刈り取り葉の部分だけをとります。 手でつみ取ってください。
② つみ取った生葉を、ミキサーにいっぱい入れ、ミキサーが回る程度に水を入れて粉砕し、藍の生葉の汁を作ります。
③ ミキサーに入れる水は適当な量でよい。藍の生葉汁は、金網などでこして、汁だけを利用すると良い。
④ ハンカチ(絹)42×42㎝のもので、ミキサーの生葉汁3杯程度の量がいる。
⑤ 濃い色に染めたい場合は、何度も繰り返し、新しい藍の生葉汁につけることが必要です。
⑥ 葉の中にあるインジコの成分を布に吸着させるとその液の中のインジコがなくなるので染まらなくなる。
▶ 徳島県における藍の歴史
徳島の藍は,全国に誇れる伝統文化と言えます。昔から徳島の繁栄を支えてきました。
徳島(阿波の国)における藍は、古くから栽培されていたのであろうと推測されます。しかし、その起源は不明でわかっていません。藍の取引を示す記録が文安2年(1445年)の「兵庫北関入船納帳」に阿波藍の輸送の記帳があり、藍の生産がおこなわれ流通していたことがわかります。
蜂須賀家政が、天正13年(1585年)に徳島の阿波藩主となってから、藩の財政を支えるために吉野川流域で従来から栽培されていた藍栽培を奨励しました。そして、藍は、塩、煙草、稲作などとともに生産量を増加させました。
徳島の吉野川下流域の農業を北方農業といい、吉野川の氾濫により、稲作をするには条件が悪い地域でありました。しかしその反面、吉野川は下流域に肥沃な土地をもたらし、水の便もよく、藍栽培にとっては適した地域でありました。藍は、藩による生産の保護と奨励とともに、洪水の被害が少なく、稲作りよりも収益の高い作物の藍栽培が発展していきました。
また、古来より長い間高級品であった綿は、戦国時代の後期ごろから全国に綿布の使用が普及し、綿花の栽培が始まり江戸時代に入ると木綿問屋も形成され、急速に栽培と生産量が増大しました。綿花の生産の増加にともない綿を染める染料の藍の需要は高まりました。
そして、阿波藍の栽培は藩の積極的な政策もあり、江戸時代の中期頃には吉野川の下流域から中流域まで広がり生産量をのばしました。阿波の藍は、品質のよい染料として高く評価され、藍玉(すくもを練り固めてこぶし大にしたもの)に加工し、全国に出荷されました。
藍の生産は、明治時代の後期頃まで生産量が拡大し、明治36年には最高の15,000ヘクタールの生産規模となりました。 しかしその後、化学染料の発明で安価な染料が普及したために、明治40年に、7,542ヘクタール、昭和元年には502ヘクタール、昭和40年には4ヘクタールまで急激に生産が減少してしまいました。
しかし、衰退の一途をたどっていた藍栽培は、伝統工芸品や自然の手作り作品への人気の高まりなどもあり、昭和50年頃から郷土の伝統ある産業として見直されるようになるとともに、藍染め作品が注目されるようになりました。そしてそれを受けて藍栽培の面積も徐々に増加をしてきました。
昭和50年には、10ヘクタール、昭和60年には、21ヘクタール、平成3年には、22ヘクタールと生産面積が20ヘクタール台にまで回復してきています。
徳島藍の歴史についての参考図書
・徳島県史 (徳島県史第4巻昭和40年発行)
・阿波藍民俗史(徳島染織学会 上田俊雄氏 昭和58年発行 )
・藍染めの歴史と科学(三木産業株式会社技術室 平成4年発行)
・日本の藍 染色と美の伝統 (日本藍染文化協会 平成6年発行)
▶ 藍の栽培 栽培基礎研究
1)種まき
・まき時期 3月下旬から4月上旬
・まき床を作って、種をばら蒔きにして苗を育てる方法と、種まきラグ箱にたねを5~6粒
ずつまく方法があります。 育苗箱でも苗を作ります。
・発芽に7日~9日、種まきから30日~40日で植え付けようの苗になります。
・まき床の苗取りは、前日に充分水をやり床を柔らかくしてから、苗を手で抜き取ります。
手で握れるくらいの適当な束にします。
・管理は、水やりに注意して、乾かさないように十分潅水する。
2)植え付けと畑の準備
・よく耕運し、有機質肥料や化学肥料を入れてよく耕運する。
1アール当たり、有機質肥料(堆肥100㎏~300㎏程度)
化学肥料(化成48号14㎏~16㎏程度)
・植え付けのうね幅は、60㎝前後として、苗と苗の間隔は20㎝から25㎝程度とする。
プラグ苗は15㎝~20㎝程度とする。
・植え付けは5本から6本を一まとめにして植える。
・植え付け後、十分に水をかけ、枯れないようにする。
3)管理
・根寄せ・・植え付けて活着すると、株の根本に土を寄せる。
雑草の防止。
・除草作業・こまめに草を抜き取り生長を助ける。
・肥料・・・最初に元肥を施す。
根寄せ時に追肥料
1アール(10㍍×10㍍)の面積で化学肥料
(化成48号10キロ程度)
4)害虫の防除
・植え付け時・・・「アブラムシ」などが生育の初期に発生するので、オルトラン粒剤を散
布する。
・幼虫の駆除・・6月7月になるといろいろな幼虫が発生をする。小面積であれば手で取り
除けばよい。面積が多い場合は適当な殺虫剤を散布し防除する。5)葉藍の収穫
<手刈りの場合>
・のこぎりがまで根本から刈り取る。握れるほどの適当なたばにしてひもでくくるにする。
・乾燥は、ひもでつるしたり、庭に広げたりして乾燥をさせる。ある程度乾燥したら、軸(茎)から葉をたたいてとる。それをさらに乾かして乾燥葉藍を作る。
5)手刈りから機械選別の場合
・手刈りしたものを、機械のカッターで切断し、大型の扇風機で茎と葉をより分けて、葉の
みを天日乾燥する。1日で乾燥葉藍ができあがる。
<手刈りから機械選別の場合>
・手刈りしたものを、機械のカッターで切断し、大型の扇風機で茎と葉をより分けて、葉のみを天日乾燥する。1日で乾燥葉藍ができあがる。
6)2番刈りの準備
・刈り取った後、雑草等を取り除き、化成48号(5㎏程度)施し、土を耕し株元へ土を寄
せる。
・1ヶ月から40日程度で刈り取りができるまでに生長をする。
適当に防除と除草などの管理を行う。
・ 刈り取りの要領は1番刈りと同じです。
7)藍の種の採取
・2番刈り後の藍をそのままにしておくと、刈り取った株からさらに生長をして枝葉を付け
てくる。10月にはいると赤や白の花を付けはじめる。花が終わると実がつき始める。花
の咲き始めと終わりには幅があるので花が終わり実が熟しているのを見極めて刈り取る。
早く咲いたものは刈り取りの時に実(種子)が落ちてしまうがしかたがない。
・刈り取ったものを「むしろ」などに広げ乾燥をさせる。乾燥したら手でもみながら、種子
だけを集める。さらに乾かしビンなどに入れて保存する。
*藍の種は前年に収穫した種を使用するようにする。古くなると発芽率が極端に低下する。
▶ 「すくも」づくり
9月下旬にはいると「すくも」づくりにはいります。乾燥した葉藍に水をかけ発酵にかかります。
一週間に一度切り返しを行い発酵を進めます。約3ヶ月でできあがります。
1)寝床について
「すくも」づくりは、屋内で行います。乾燥した葉藍に水をかけ、堆肥を作るように発酵(腐らせる)させて、インジコの成分を凝縮させます。発酵を促進させるためには、水と温度の管理が大切です。これらの発酵を土間の上で行います。その土間のことを「寝床」と言います。また、徳島では納屋全体をさして寝床とも言っています。
土間の構造
表面から粘土の層(30㎝程度)その下に、「もみがら」(20㎝)、その下に、砂(5㎝程度)その下に、砂利などを敷き詰めて水分の上昇を抑え、発酵温度が地下へ逃げないようにしています。
2)すくも作り
つくも作りの時期・・・・9月下旬頃からはじまります。冬場の仕事として2月下旬まで順次行います。
1回目の切り返し
かるく葉藍に水を打ちながら山積みにします。生産量が少ない時は、毛布などで保温をする必要があります。山積みした葉藍に毛布などを掛けて保温をしています。完成キロ数が「すくも」250キロ程度を目標にしています。山積みした葉藍の発酵温度(中心の温度)は、約70度くらいになります。
必ず1週間に1回は切り返しを行います。
研究室の場合は,生産量が少ないため発酵温度が上がらないことがありますので,毛布等をかぶせて保温をしています。
2回目の切り返し
山積みした葉藍を、 たてに切って混ぜます。 このときに水をかけて、 湿り気を補給します。水の量は、葉藍を握ったとき、手に湿り気が残り、強く握ると少し水が指の間から出る程度の水分量とします。切り返しが終わると,また,山積みをして毛布などで巻いて保温をします。
3回目以降
2回目の作業を、 以後繰り返し行います。切り返しと発酵が進むにつれて、 すくもが固まり玉になることがあります。玉になるとその中の発酵が止まってしまうので、砕いて発酵させる必要があります。
切り返して空気と水分を補給し発酵させる作業を12回から15回繰り返すと「すくも」のできあがりです。
発酵の停止
発酵温度の低下と水分の蒸発が少なくなり、水分を補給しなくても湿り気がある状態になります。切り返しをして空気を入れても発酵温度が上がらずさめてしまう状態になり、最初の葉藍の量のかさが5分の1ぐらいに減少し、土のようになるとできあがりです。
▶ 藍を建てる ~清酒・ふすま建て~
仕込み分量 (1.5石(270ℓ)瓶建て)
初日
すくも 20kg
消石灰 元石 500g
清酒 1260cc
灰汁 180ℓ
中石の頃
消石灰 中石 300g
ふすま 200g
止石の頃
消石灰 止石 200g
灰汁 容器の口まで
仕込み方法
1.すくもをよく砕いて容器に入れる。
2.灰汁を熱して(40~50℃)容器に入れよく混ぜる。
3.消石灰(元石)を入れる。
4.清酒を入れる。
5.容器の6~8分目まで温湯を入れる。
6.よく撹拌して仕込み完了。
<中石の頃>
1.消石灰(中石)を入れる。
2.ふすまを流し込める程度の水で練る。
3.ふすまを火に掛け粘りがでるまで炊く。
4.人肌程度に冷まして藍に入れる。
5.よく撹拌する。
発酵過程
① 1日目 仕込み直後
液面は茶褐色で泡状の浮遊物がある。
アンモニア臭がする。
液温は40~50℃,初発pHは11.50~12.00程度
② 2日目 仕込み翌日
浮遊物が沈殿し,液はさらりとしている。
次第に発酵が進みアンモニア臭がきつくなってくる。
発酵が進む→pHが下がる
③ 3~4日目 中石投入の頃
液面に紫金色の斑点が現れる。撹拌すると緑色の泡が立つ。
pHが10.5~10.3前後になる頃中石を投入し,ふすまも加える。pHが12.00近くまで上昇する。
ふすま→藍還元菌の栄養補給
中石→過度の発酵による腐敗を防ぐ
④ 6~7日目 止石投入の頃
中石投入により発酵は一段と活性化し,液面は紫金色の膜に覆われる。
撹拌すると粘りのある緑色の泡が立ち再酸化して青くなる。
更にpHが低下する兆しがあれば止石を投入し,灰汁で嵩上げをする。
⑥ 発酵完了
遠心に撹拌すると紫金色のギンギラとした泡の集合「藍の華」が浮かぶ。
建ち上がりのpHは11.50前後である。嵩上げ後1~2日して染色を開始する。
仕込みから建ち上がりまでは朝夕2回その後は少なくとも1日1回は撹拌してpH10.50~11.00の範囲を保持するよう灰汁・消石灰等で調整する。
▶ 藍の化学
インディゴは青藍を呈する染料
○インディゴの化学式 C16H10N2O2
○インディゴの構造式
○インドキシルの化学式 C8H7NO
○インドキシルの構造式
○ロイコ体インジコ C16H12N2O2
藍による染色は、生葉から染めつける方法(生葉染め)と「すくも」にしたものを強アルカリの中で微生物によって還元することにより染める方法(藍建染め)がある。
同じような染ではあるが、染色の原理は大きく違う。
ここでは、その2つの染を科学的に説明することとする。
1 生葉染め
タデ科の植物である藍は、植物体内の葉の部分に青色の原料となる化学物質「インジカン」を含有している。「インジカン」は、無色であり、葉の組織内に存在している。空気中の酸素と結合することにより「インジコ」に変化して青色を発色する。
発色の原理は、葉の中に含まれるインジカンを抽出して、インジカンの水溶液を作る。(生葉と水を入れたミキサーで粉砕して液を作る)その溶液に含まれている酵素(植物体内にある酵素)の働きによりインジカンがインドキシルとグルコースに変化する。インドキシルを繊維に吸着させて空気中の酸素と結合させることによりインジゴとなり青色を発色する。
*繊維は、絹、羊毛などのように繊維分子が+-の電気を帯びていることが必要で、インドキシルの持つ+-と強く結び付くために染色されることになります。木綿や麻などは+-の電気が少ないので染まりません。
「インジカン」の化学式 C14H17NO6 「インドキシル」 C8H7NO
加水分解 酸化
インジカン ― ― ― ― ― → インドキシル ― ― ― ― ― → インジコ
インジカン分解酵素 空気中の酸素と結合
2 藍建
青色の成分である「インジカン」は、植物体の葉の部分だけに含有している。葉の部分を収穫し、乾燥させたものが葉藍である。乾燥させた葉藍に含まれる「インジカン」は、酸化により「インジコ」となる。その後、葉藍は水をかけ発酵(腐らせていく作業)させます。これが染料の「すくも」である。
藍建は、この「すくも」をアルカリ性の水溶液に溶かし、微生物の働きにより「インジコ」を「ロイコ体インジコ」へと還元させ、瓶の中の水溶液に溶け出させる。
溶けているロイコ体のインジコは繊維に吸着させた後、空気中の酸素と結合(酸化)させることで青色に染色させることができる。
還元 酸化(青色の発色)
「インジコ」― ― ― ― → 「ロイコ体インジコ」― ― ― ― → 「インジコ」
微生物の働き 藍の瓶(かめ) 繊維に吸着 空気中の酸素と結合
C16H10N2O2 ― ― C16H12N2O2 ― ― C16H10N2O2
▶ 藍染め作品
藍染めは紺色の鮮やかな冴えわたる深みのある色から淡い色まで多彩に染め分けることができます。
花嫁の純白と相まってシックな趣きをかもし出し、花嫁を引き立てます。
平成29年度卒業制作写真集
ジャパンブルーを追求した藍のウエディングの提案
▶ 学生の研究実習
人間生活科学科1年生全員に藍染め体験実習を行っています。藍染めに関する基本的な知識と染めの実際を体験的に学習します。材料は、各自ハンカチを染めます。
四国大学┃人間生活科学科┃公認心理師コース┃心理・養護コース┃デザインコース┃藍の家┃個人情報の取り扱い┃このサイトについて┃
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